top of page
黒王国物語ロゴ.png
第0章 姫の逃亡劇(3)

【セシル】

「この歌を聴けるのも最後か……。」

【ナレ】

「酒場の片隅にあるステージで歌姫・アリスは最後の一節を奏でた。」

【アリス】

「セシルさん。最後の歌を聴いて下さりありがとうございました。」

【セシル】

「アリス……。いや、戦場から帰って来て最初にお前に会いたかった。」

【アリス】

「私に会いたかった?」

【セシル】

「ああ。しかし、その大好きな歌声ももう聴けなくなるとはな。」

【セシル】

「先程王様が国民をリーフィ村へ逃がす事を決めたようだ。」

【アリス】

「セシルさん、貴方も行くのですか?」

【セシル】

「この国を最後まで守りたいが不可能だろう。」

【セシル】

「既に姫は逃げた。だからどうかお前も俺と一緒にそこで暮らそう。」

【アリス】

「私は構いません。でも、ユウ様が……。」

【アリス】

「……ユウ様が逃げられるというなら私も。」

【セシル】

「知っているか? シュヴァルツ王国民の逃亡先であるリーフィ村は、あの有名な司祭であるユーグ様がいるという。」

【セシル】

「きっとユウ様もリーフィ村へ向かわれるだろう。そこでアリスも天使教を信仰すれば良い。」

【アリス】

「天使教は私にとって貴方を待つ心の拠り所です。これからも信仰させてください。」


【ナレ】

「天使教教会シュヴァルツ王国本部では神子たちによる慈悲活動が行われていた。」

【モニカ】

「この人達を見ると……、なんだかあたし達がのうのうと生きているのが申し訳なくなるわね。」

【リリアン】

「モニカの馬鹿! あたし達は天使教の神子にずっと祈って来たのよ! 罪に感じる事はないわ!」

【メリル】

「でも、シュヴァルツ王国は滅ぶし天使教もこの国で滅ぶんだろうね。」

【メリル】

「ねえ、ユウ。僕達もリーフィ村へ逃げるのかな?」

【ユウ】

「そうですね。恐らく俺達は一緒にリーフィ村へ行く事になるでしょう。」

【ユウ】

「ただ、俺には……。」

【モニカ】

「あっ、ユウ。噂の人が来たわよ。歌姫・アリス、いらっしゃい!」

【アリス】

「皆様、お久しぶりです。」

【モニカ】

「アリス、貴方はリーフィ村へ逃げるの?」

【アリス】

「ええ、そのつもりです。騎士団長・セシルと共に。」

【モニカ】

「ひゅーひゅー、アリスは確かセシルと恋仲だったわよね!」

【メリル】

「僕達神子も怪我人の看病が終わったらリーフィ村へ行くつもりなんだ。」

【メリル】

「ねっ、ユウ?」

【ユウ】

「えっ、あっ、はい。その予定です。」

【ユウ】

「アリスさん、リーフィ村へ逃げられても天使教を信仰してくださるんですよね?」

【アリス】

「勿論です、ユウ様。」

【ナレ】

「こうして騎士団長・セシルと共に歌姫アリスはリーフィ村へ逃げ延びたのだった。」

【ナレ】

「それを追うように白神子・ユウ達もまた共にリーフィ村へ逃げたのだった。」

Next

bottom of page